2013年5月28日火曜日

[Day 26] ツタの話


三角形の一辺の外壁は隣の建物から生えてきたツタで覆われている。窓から入る日差しも緑の天然のグリーンカーテンで淡い色に変わる。このツタが絡まった味のある建物にどうも自分は弱いみたいだ。学生時代を過ごした母校もツタに覆われていた。余りに校舎が素晴らしくて、ジャケ買いのように受験をする学校を決めてしまった。結果は世紀の名盤に出会った気分。今でもあの学校に通えたことは自分の中で大きな財産となっている。

しかし、その後、校舎は老朽化のため大部分が立て壊しになってしまった。建物はビルに形を変え、シンボリックだったアーチのみが残されることが決まった。それに関してはしょうがない選択だったと思う。形ある物はいずれ壊れる。何より時代に合った取捨選択をしなければ学校として生き残れない。ただ、後に新校舎を見た時、残されたアーチに覆っていたツタだけはなかった。どうやら、塗装を塗り直す段階で全て切り取られてしまったらしい。あっけなく思い出の校舎ではなくなってしまった。



三角ビルを初めて見た時、どこか懐かしいと感じたのはこの母校の校舎に少し面影を感じたのかもしれない。母校とは違い、こちらは無骨でデザイン性など皆無なのに。







三角ビルはツタに覆われた一辺以外はのっぺらぼうのように窓しかない。しかし、通りに面してるのがその面なのだ。一度、外壁を塗り直すことも考えたが、足場を組むことによるコストの増加や、今覆っているツタを除去をしなければ塗れないことが分かった。せめて、のっぺらぼうの正面だけでも塗ろうかと思ったが、舞台のセットのように正面だけ綺麗で裏に回ると実はハリボテだと嫌だなと思って結局やめてしまった。







こうなったら正面を何も書かれてないキャンパスと捉え、一つのアイデアが浮かぶ。実は母校に生えていたツタは卒業生と先生が切り取られる前に分け、大切に育っていたことが分かった。三角ビルと契約後、友人を頼りその後のツタの行方を調べてもらった。ツタは意外な所で見つかった。







解体を逃れた母校のアーチをツタは少しだけ覆っていた。卒業生が持ち帰り育ってていたツタは一株を残して枯れてしまい、その最後の一株を以前のようにアーチを覆って欲しいとの願いから2年ほど前にもう一度植えられていた。小さな幹だったツタは少しずつ成長をし、部分的だが天井を覆うまでになっていた。



懐かしさを通り越して、もはやサウダージな感覚に。事前にツタを分けてもらう許可を先生方に取り、久しぶり母校を訪れた。やはり、ツタがあの雰囲気を作り出していたんだなと思い嬉しくなった。先生方に現状報告とあいさつをし、育て方のアドバイスと共に一蔓頂いて帰った。








今、我が家で挿し木をしてツタから根が生えるのを待っている。季節によるけど、2週間から1ヶ月ほどで根は生えてくるそう。あののっぺらぼうの一面を覆うのはどれくらいかかるのだろうか、楽しみでしょうがない。


その前にこのツタを枯らさないようにしないと。




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